大阪地方裁判所堺支部 平成2年(ワ)890号 判決 1992年7月29日
原告
宇野隆三
被告
国
右代表者法務大臣
田原隆
右指定代理人
塚本伊平
同
前垣恒夫
同
前川敦夫
同
小出美保
同
林美子
同
東尾正照
同
坂川巌
同
森山民雄
同
関本幸男
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は原告に対し、金六二〇〇円及びこれに対する平成元年五月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 主文同旨。
2 担保を条件とする仮執行免脱宣言。
第二当事者の主張
一 請求の原因
1 原告は、平成元年五月二六日の時点において、雇用保険法上の日雇労働被保険者であり、雇用保健(ママ)法四五条に定める日雇労働求職者給付金(以下「日雇給付金」という)の受給資格者であった。
2(一) 原告は、右同日午前八時四〇分ころ、雇用保険法四七条二項に定める失業認定を受けるために、堺公共職業安定所堺東労働出張所に出頭して求職の申込を行った。
(二) ところが、同安定所長は、原告に対し、日雇労働被保険者の失業認定時限と定める午前八時三〇分を経過しているとの理由で失業認定をしなかった(以下「本件措置」という)。
(三) 本件措置により、原告は、同日の日雇給付金六二〇〇円を受給することができなかった。
3 しかしながら、同安定所長の右措置は、以下の理由で違法であるから、被告は原告に対し、原告が受給することができなかった右金員につき、損害賠償責任を負う。
(一) すなわち、同安定所長は、本件措置当時、雇用保険法施行規則七五条六項、職業安定行政手引九〇四五三に基づき、同出張所における失業認定時間を、一般の日雇労働被保険者については午前八時から午前八時三〇分までの間と定める一方、運転手関係の日雇労働被保険者(労働大臣の許可を受け労働者の供給事業を行う労働組合の組合員に限る。以下略)については午前八時三〇分から午前九時までの間と定めていた。
そして、右認定時間の定めに基づき、一般の日雇労働被保険者である原告に対しては、午前八時三〇分の経過を理由として本件措置がとられ、他方、運転手関係の日雇労働被保険者は午前九時まで失業認定を受けていたものである。
(二) しかし、雇用保険法上は、一般の日雇労働被保険者も運転手関係の日雇労働被保険者も、法定の保険料を支払って受給資格者となった同じ被保険者であって、公共職業安定所から受けるサービスは同一であるべきであり、労働組合員であることや労働組合を通じて求職活動を行ったかどうかによって差別的な取扱を受けるべき理由はない。
したがって、本件措置は、原告のような一般の日雇労働被保険者を運転手関係の日雇労働被保険者に比し、合理的な理由もなく不当に差別的に取扱うものというべきであり、憲法一四条、職業安定法三条に照らし違法といわねばならない。
4 よって、原告は被告に対し、国家賠償法に基づき、金六二〇〇円及びこれに対する不法行為の日の翌日である平成元年五月二七日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び主張
(認否)
1 請求原因第1項の事実は認める。
2 同第2項(一)ないし(三)の事実はいずれも認める。
3 同第3項のうち(一)の事実は認めるが、(二)の主張は争う。
(主張―本件措置の適法性)
1(一) 堺公共職業安定所においては、自動車運転手を組合員とする労働組合で、職業安定法四五条に基づき労働大臣の許可を受け無料の労働者供給事業を行う労働組合(以下「運転手組合」という)に属する日雇労働被保険者と、それ以外の日雇労働被保険者(以下「一般日雇労働被保険者」という)との二つに日雇労働被保険者を区分し、それぞれの失業認定時間を、一般日雇労働被保険者は午前八時から午前八時三〇分まで、運転手組合に属する日雇労働被保険者は午前八時三〇分から午前九時までと定めており、本件措置は、各失業認定時間の定めに基づいてなされたものである。
(二) 右各失業認定時間の定めは雇用保険法四七条一項が、「日雇給付金は日雇労働被保険者が失業している日について支給する」旨、同条二項が「失業していることについての認定を受けようとする者は、労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込をしなければならない」旨、それぞれ規定し、同法施行規則七五条六項が、「公共職業安定所長は、その公共職業安定所において失業の認定及び日雇給付金の支給を行う時刻を定め」る旨規定し、さらに、雇用保険業務の業務取扱要領(昭和六〇年八月七日付第四四〇号労働省職業安定局長通達)が、「失業の認定時間は日雇労働被保険者の就労配置の時限(午前七時から午前八時を基準とする)の後に定めることを原則とするが、各地方の特殊事情、労働市場の状況、その他安定所の機能及び事務量等によって、失業の認定時限を一時間以内において延長又は変更することができる」旨規定しているのに基づき、堺公共職業安定所長において、以下に述べるような、地域の特殊事情、労働市場の状況、同公共職業安定所の機能及び事務量等を考慮して、右権限に基づく自由裁量により、合理的な区別としてこれを定めたものであり、右各失業認定時間も各三〇分間ずつであって、何ら不合理な差別的取扱ではない。
したがって、右各失業認定時間の定め及びこれに基づいてなされた本件措置は、いずれもなんら違法なものではない。
2(一) 大阪府下における日雇労働市場の推移と公共職業安定所の日雇労働者の職業紹介の実態
大阪府下における日雇労働者の労働市場は、二〇余年前には公共職業安定所に集中していた日雇求人が、今日では殆どなくなり、代って、昭和三六年八月の第一次釜ケ崎事件を契機に昭和三七年一〇月に設立され、地区労働者の就労確保のため職業紹介を行ってきた財団法人西成労働福祉センター(以下「西成センター」という)に日雇求人が集中するようになり、今日では府下のみならず近畿全域の日雇労働者の求職活動につき西成センターを中心に労働市場が形成されていて、公共職業安定所における日雇労働者の職業紹介は、ここ一〇数年来皆無に近い状態にあるのが実態である。
(二) 堺公共職業安定所の日雇労働者職業紹介の実態と運転手組合の労働者供給状況
(1) 堺公共職業安定所管内においても、右と同様の状態にあり、本件発生の平成元年度に限定してみた場合、一般日雇労働者の月平均有効求職者八二九名に対し、年間総求人延数は三〇〇名に過ぎず、求人は一日平均一名に満たないものであって、一般日雇労働者に対する職業紹介は全く皆無に近い状態にある。
(2) 他方、運転手組合の労働者供給状況は、同じ平成元年度をみた場合、三月末組合員数九一名に対し、年間延総求人数は一万八九九八名であるから、組合員一人当たり年間二〇八日分の就労が推定でき、職業の安定と経済の興隆に寄与するという職業安定法の目的に照らし、運転手組合は、職業安定機関の行う職業紹介の補完的機能を担うものと位置づけされる。
(三) 日雇労働者の日々の求職活動の実態
(1) 日雇労働者は、その日の就労先がない場合は、通常その日の朝に西成センターの職業紹介あるいは自らの求職活動により就労先を確保することになるが、日雇労働者の就労現場では、午前八時から作業を開始する事業場が九割以上を占めているので、日雇労働者は午前八時までに現場に到着する必要がある。
(2) かかる就労実態から、西成センターにおける職業紹介は午前五時四五分から行われ、ほぼ午前七時すぎには終了する状況にある。
すなわち、一般日雇労働者の求職活動においては、右の職業紹介による場合、当日の就労先を確保するには早朝という時間的制約があり、午前七時すぎが概ねその限度であって、自ら行う求職活動においても、通常午前八時以降にその日の就労先を確保することは殆ど期待できないのが実態である。
(3) 他方、運転手組合に属する日雇労働者の場合、運転手組合は、組合員に対して、基本的に午前八時の始業に間に合うよう紹介をしているものであるが、同組合が供給契約を締結している主たる供給先である生コン輸送等の事業所においては、当日の欠勤者の補充や緊急の求人による追加の求人需要が恒常的となっている。そこで、運転手組合は、主たる供給先事業所のこのような求人需要に最大限応えるとともに、組合員の就労を最大限確保するため、午前八時三〇分まで紹介を行っているのが実態である。
(四) 堺公共職業安定所の失業認定業務の実態
(1) 堺公共職業安定所の失業認定事務においては、日雇労働被保険者が前記失業認定時間内に窓口へ出頭し、日雇労働被保険者手帳を提出すれば(前記のように午前七時過ぎころに当日の求人は既に充たされているから)、直ちに失業認定を行うが、日雇給付金の支給は、通常認定時間終了後になすものであり、運転手組合に属する日雇労働被保険者の場合は午前九時以降、それ以外の一般日雇労働被保険者の場合は、午前八時三〇分以降に日雇給付金の支給がなされる。
(2) そして、一般日雇労働被保険者の場合には、昭和六三年度及び平成元年度において失業認定をした後の求人紹介による失業認定の取消件数は皆無であるのに対し、運転手組合に属する日雇労働被保険者の場合は、失業認定及び日雇給付金支給後において、追加の求人紹介による失業認定の取消件数は、昭和六三年度で一〇六件、平成元年度で五九件に上っている。
右事実は、一般日雇労働被保険者の場合、失業認定時間を繰り下げたからといって就労機会が増えるというような労働市場状況にはなく一般日雇労働被保険者と運転手組合に属する日雇労働被保険者とでは求人需要の実態が相違することを如実に示すものである。
(五) 堺公共職業安定所長の失業認定時間設定
(1) そこで、堺公共職業安定所長は、以上の諸点を総合考慮し、一般日雇労働被保険者に対する職業紹介時間を概ね全国的な基準である午前七時から午前八時までとし、日雇給付金を支給するための失業認定は、右紹介時限後ただちに同所において行うのが能率的かつ合理的であることから、失業認定時間は午前八時から午前八時三〇分までと定めたのであり、他方、運転手組合に属する日雇労働被保険者については、右運転手組合による職業紹介の前記実態及び運転手組合の紹介で就職することができなかった者が同組合事務所から同安定所まで出頭するに要する時間等を勘案して、失業認定時間を午前八時三〇分から午前九時までと定めたものである。
(2) 以上のとおり、堺公共職業安定所は、雇用保険法、同施行規則及び行政手引通達に基づき、これまで一貫して地域の特殊性、労働市場の実態、事務量等を勘案し、職業紹介の実態、職種あるいは就労形態等の相違による区分等を行うなど効率的な失業認定業務を行ってきたものである。
因みに、堺公共職業安定所と同一労働市場に属する泉大津、岸和田、泉佐野の泉南三所の公共職業安定所については、いずれも失業認定時間は一区分であり、概ね午前八時から午前八時三〇分に統一されているが、これは右いずれの安定所とも一般日雇労働被保険者の求人のみで、運転手組合の分会組織、事務所がないためであり、一般日雇労働被保険者の失業認定時間については、堺公共職業安定所も含め、概ね右時間に統一されているものである。
三 被告の主張に対する認否
被告の主張事実のうち1(一)の事実は認めるが、その余の事実はすべて争う。
第三証拠
本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する(略)。
理由
一 請求原因事実のうち、1、2(一)ないし(三)、3(一)の各事実、すなわち、原告が、平成元年五月二六日の時点において、雇用保険法上の日雇労働被保険者であり、雇用保健(ママ)法四五条に定める日雇給付金の受給資格者であったこと、原告は、右同日午前八時四〇分ころ、雇用保険法四七条二項に定める失業認定を受けるために堺公共職業安定所堺東労働出張所に出頭して求職の申込を行ったこと、同安定所長は、原告に対し、その失業認定時限と定める午前八時三〇分を経過しているとの理由で失業認定をしなかったこと、右本件措置により、原告は、同日の日雇給付金六二〇〇円を受給することができなかったこと、同安定所長が、雇用保険法施行規則七五条六項、職業安定行政手引九〇四五三に基づき同出張所における失業認定時間を、一般日雇労働被保険者については午前八時から午前八時三〇分までの間と定める一方、運転手組合に属する日雇労働被保険者については午前八時三〇分から午前九時までの間と定めていたこと、右認定時間の定めに基づき、一般日雇労働被保険者である原告に対しては、午前八時三〇分の経過を理由として本件措置がとられ、他方、運転手組合に属する日雇労働被保険者は午前九時まで失業認定を受けていたこと、以上の事実は当事者間に争いがない。
二 憲法一四条は、すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されないことを規定し、また、職業安定法三条も、右憲法一四条をうけて、何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない旨規定している。
しかしながら、右各規定は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、合理的と認められる取扱の差別まで禁じているものではないと解すべきである。
ところで、雇用保険法四七条一項は、「日雇給付金は、日雇労働被保険者が失業している日について支給する」旨、同条二項は「失業していることについての認定を受けようとする者は労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込をしなければならない」旨各規定しているから、日雇労働被保険者が日雇給付金を受給するためには、公共職業安定所へ出頭し求職の申込をして失業認定を受けることを要するものであるところ、同法施行規則七五条六項は、「公共職業安定所長は、その公共職業安定所において失業の認定及び日雇給付金の支給を行う時刻を定め」る旨規定し、失業認定時限をその公共職業安定所の所長において、その裁量により定めるべきものとしている。
そこで、本件において、堺公共職業安定所長が、同安定所における失業認定時間を、一般日雇労働被保険者については午前八時から午前八時三〇分までと定める一方、運転手組合に属する日雇労働被保険者については午前八時三〇分から午前九時までと定め、右の定めに基づき、一般日雇労働被保険者である原告に対し、右失業認定時限である午前八時三〇分の経過を理由として失業認定をしなかった本件措置が裁量権を逸脱した合理的な理由を欠く差別的取扱であり、憲法一四条等に違反する違法なものであるかにつき判断する。
三 前記争いのない事実に、(証拠・人証略)原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。
大阪府下における日雇労働者の労働市場状況は、二〇余年前には公共職業安定所に集中していた日雇求人が、昭和三七年に設立された西成センターに集中するようになり、今日では西成センターを中心に府下のみならず近畿全域の日雇労働者の労働市場が形成されていて、公共職業安定所における日雇労働者の職業紹介は、ここ一〇数年来皆無に近い状態にあること、堺公共職業安定所管内においても、本件措置当時の平成元年当時、一般日雇労働者の月平均有効求職者数八二九名に対し、年間総求人延数は三〇〇名に過ぎず、求人は一日平均一名弱であり、一般日雇労働者に対する職業紹介は皆無に近い状態にあったこと、他方、運転手組合に属する日雇労働者の場合、平成元年三月当時、組合数三、組合員数計九一名に対し、年間延総求人数は一万八九九八名であり、組合員一名当たり年間二〇八日分の就労が推定でき、運転手組合は職業安定機関の行う職業紹介の補完的機能を担っていたものであること、日雇労働者の就労現場では午前八時から作業を開始する事業場が九割以上を占めており、就労現場へ右時刻までに到着する必要があるため、西成センターにおける日雇労働者への職業紹介は、午前六時前から行われ午前七時過ぎころには終了するものであること、運転手組合に属する日雇労働者の場合、運転手組合が供給契約を締結している事業所の業務の都合等から、午前八時を過ぎた後の追加の求人が恒常的となっており、運転手組合も右需要に応じて、所属の日雇労働者に対し午前八時を過ぎた後も職業紹介をしていること、堺公共職業安定所の失業認定事務は、日雇労働被保険者が前記失業認定時間内に出頭し所定の手続をすれば、前記のように午前七時過ぎころには当日の求人は西成センターにおいて充たされているから、直ちに失業認定を行い、失業認定時間の終了後に日雇給付金の支給をしているものであり、多い日では約六〇〇名に及ぶものであるところ、一般日雇労働被保険者の場合、昭和六三年度及び平成元年度において、失業認定後の求人に対する職業紹介による失業認定取消件数は皆無であるのに対し、運転手組合に属する日雇労働被保険者の場合、失業認定後の求人に対する職業紹介による失業認定取消件数は、前記のように午前八時を過ぎた後の追加の求人が恒常的となっていることから、昭和六三年度で一〇六件、平成元年度は減少しているがなお五九件あること、堺公共職業安定所長は、以上のように、一般日雇労働被保険者の場合には、午前七時過ぎころに当日の求人が西成センターにおいて充たされ、追加の求人は皆無であることから、西成センターから同公共職業安定所へ出頭するのに要する時間等を勘案し、その失業認定時間を午前八時から午前八時三〇分までと定め、他方、運転手組合に属する日雇労働被保険者の場合には、午前八時を過ぎた後の追加の求人が恒常的となっていることから、堺市内の各組合事務所から同公共職業安定所へ出頭するのに要する時間等を勘案し、その失業認定時間を午前八時三〇分から午前九時までと定めたものであること、堺公共職業安定所と同一労働市場に属する泉大津、岸和田、泉佐野の各公共職業安定所は、管内に運転手組合の事務所がなく、一般日雇労働被保険者の失業認定のみを行っていることから、その失業認定時間をいずれも堺公共職業安定所と同じ午前八時三〇分までと定めていること、原告が本件措置の当日午前八時三〇分までに堺公共職業安定所に出頭できなかった原因は、当日肩書自宅から自家用車を運転して同安定所に向かったところ、降雨に伴う交通渋滞のため思わぬ時間を要したためであって、公共の交通機関を利用していれば充分右時間に間に合うことができたものであること、以上の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
四 以上の事実によれば、堺公共職業安定所においては、管内の運転手組合が職業安定機関の行う職業紹介の補完的機能を担っており、同組合所属の日雇労働者に対しては、一般日雇労働者とは異なり、午前八時を過ぎても追加の求人が恒常的に存し、午前八時三〇分以後の追加求人による失業認定の取消件数でさえ、本件措置の前年の昭和六三年に年間一〇六件もあったのであるから、堺公共職業安定所長が、同組合所属の日雇労働者を、他方で、午前七時過ぎころ以降は求人が皆無のため失業認定時間の始めを午前八時以降に繰り下げたところで求職の機会が増えるわけでもない一般日雇労働者とは区別し、前記のように同組合所属の日雇労働者の失業認定時間を一般日雇労働者の場合よりも三〇分繰り下げ、午前八時三〇分から午前九時までと定めていたことについては、少なくとも本件措置のなされた平成元年当時においては、合理的な理由があったものというべきであり、他方、原告は正当な事由もなく前記失業認定時間に遅れて出頭したものであるから、これを理由として原告の失業認定をしなかった本件措置は、なんら裁量権を逸脱した違法なものではないというべきである。
五 よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 新井慶有 裁判長裁判官山﨑杲、裁判官村上亮二は、いずれも転補につき、署名押印することができない。裁判官 新井慶有)